
今月はオランダのトマト生産者についてご紹介します。
トマト生産者のJ社は、3ha x 2棟のガラス温室にて、房取りトマトを周年生産しています。5.5haで赤色品種(写真①)、0.5haで黄色品種(写真②)を栽培しており、6haでの定植本数は180,000株です。培地にはカルチレン社製のロックウールマット(商品名オプティマックス)を使用しています。多くのトマト生産者は、ハンギングガターを使用していますが、同社は発泡板の上にロックウールマットを置いています(写真③)。シートの下に溝があり、排液を回収して再利用できるようになっています。掻いた葉は通路に放置していますが、これは6ha分を撤去する手間が大きいことや放置しておくと天敵昆虫が圃場内に残ること、掻いた直後に葉からの蒸散により湿度を保つことができることのメリットもあります。
11月初旬に苗生産会社にて播種を行い、12月初旬に4週間の20cm程度の接木苗を本圃に定植し、日射量の少ない生育初期は1本仕立てにして 2.5株/m2の密度で定植します。春から夏にかけて増加する日射量を有効的に利用するために2月中旬に3株に1株から側枝を伸ばし、茎の密度を3.3本 /m2まで増加させています。1果房あたり5果まで摘果し、1年間で30段まで栽培します。CO2施用は、基本的に日の出2時間後から日の入2時間前まで 行っています。CO2濃度は、最低1,000ppm、最大1,500ppmを目標にしていますが、天窓が開いている時は750ppm以下で推移することに なります。環境制御にはホーヘンドールン社のエコノミックを導入しています。収量は赤色品種で65~68t/10aで、黄色品種で50t/10a前後であ り、黄色品種の方が作りにくく、古い葉の葉掻きや3枚に1枚の葉を掻くなど葉面積指数(LAI)を低めに管理していました。
労働者数は、過 忙期は25名で、それ以外の時期は10~15名で6haを管理しています。作業内容ごとに作業スタッフを割り振り、専任のスタッフが同じ作業をやり続け、 1週間で6haを1週するようにローテーションしています。圃場内のコンクリート通路には、自走式の運搬用カートが走行できるようになっており、収穫後た だちに出荷調整室まで無人で輸送することで労働力を削減しています(写真④)。出荷箱を形成する機械と出荷箱を5kgに調整後にパレット積みする機械を導 入しており、これによって1時間に1,500箱を処理できます(写真⑤)。収穫物は生産者組織に出荷しており、そこから仲卸・輸出会社に販売されて、 50%がイタリアに輸出されています。
栽培システムや栽培方法は、オランダの平均的なトマト生産農家といえますが、自走式のカートや出荷箱 の自動化により、高い労賃を徹底的に削減しようとしていることが分かります。2007年に増設した3haの軒高6mのガラス温室は、採光性向上のために 167 x 214mmのガラスを採用しており、さらに天窓ガラスはアルミフレームがなく、ガラスに空いている穴にプッシュロッドを直接差し込んで固定しており(写真 ⑥)、補光装置などの大きな投資をせずにいかにハウス内への採光性を上げることが重要か分かります。通常の年であれば、販売単価は€0.70/kgあれば 採算は合いますが、今年は5月以降大腸菌(EHEC、O104:H4)問題の影響を受けており、€0.20~0.30/kg程度であり、今作は絶望的な状 況でした。
写真① 赤色品種の栽培 写真② 黄色品種の栽培

写真③ カルチレンロックウールの直置き 写真④ 自走式の運搬用カート

写真⑤ 出荷箱の自動化 写真⑥ アルミフレームのない天窓ガラス